貫く

『わああ、お久ぶりです。お元気でしたか。』
『はい、お蔭様で。優香先生は。』
『ええ、私もお蔭様で、元気にしておりました。』
この間、以前お店を手伝ってもらっていた中国医の先生お会いしたんですね。
1年以上お会いしていなかったのかな。
彼女は中国で漢方医を取られてから、鍼灸で勉強に行った今の旦那さんと会って、ご結婚され、日本にかれこれ20年前から来られていて。
そして、3名のお子さんに恵まれ、今では立派なお母さん。
彼女のすごさはそれだけじゃないのね。
中国医の免許は日本では通じないと言う事で、
そう、43歳ぐらいになってから、なんと日本の
鍼灸学校に行かれて、それも、家で、仕事をしながら、また、子育てをしながら、約1時間もかかる学校に、毎日夜間勉強に通われたのね。
雨の日も、風の日も、嵐の日も通ってね。
で、めでたく、昨年の春卒業して、もちろん、試験も一発合格されて、今はその学校の非常勤講師まで勤めているそうで。
あいやああ。
もう、もう、彼女のバイタリテーには脱帽です。
そして、此の春からは以前からの念願だった
ご主人とご一緒に鍼灸院を、開業していくとの事。
わああ。
すごいですよ。
おめでとう。秊ですね。
そして、来年には高校を卒業する上のお姉ちゃんを、1人北京に出すそうです。
先生のご両親はつまり、おばあちゃん、おじいちゃんは上海にいるのに、北京に。
何故かと聞いたら、
『家の子供達には18歳までは親が責任を持って面倒は見るけど、それ以上は此の家から出て、ちゃんと1人でしていきなさいと。
もちろん、最低限の仕送りもするけど、まずは家から出なさいと。そうしないと、自分のやりたい事も、世の中の事も、分からないでしょう。』
とのお言葉。
『ハイ、その通りですね。』
いやはや、もともと自立をされていた先生とは思っていましたが、やはり一つのことを貫き通した方は、非常にしっかりと立っていらっしゃる。
そう、彼女も以前は学校へ行く行かないで、随分と迷われていたのね。
その当時、私も相談は受けたのですが、私なら、
頑張っていくかも。と言っていたそうで。
でも、彼女は、中国の医師を持ちながら、何でいまさら日本の免許を、それも高額な授業料をかけて、行かなくてはいけないのか。って随分と迷われていたのですね。
そりゃそうよね。
日本の勉強が悪いわけではないけど、本場中国の方が教えて頂くのは、相当詳しいもんね。
でも、彼女はそれでも意を決して、飛び込んでいったわけだ。
そうしたら、学校に通っている時の先生からは、
『優香先生。私今すごく勉強になっているのよ。
楽しいの。今まで、中国の方が何でも分かっているつもりだったけど、入って見て、日本人の見方もまた新たな発見なのよ。』
って、言われていて。
更に、『私の店も昨年の9月で10周年を迎えました
その節は先生にもお世話になって。』
っと話していたら、
『私なんて何もお役に立てず。でも優香先生もよく
頑張ったよね。えらいね。』とのお言葉。
ありがたいです。
実は以前はそのような言葉を吐く方でもなく、もちろん言葉の壁はあったのですが、とてもプライドの高い感じの方でして。
もちろん、私もそれ以上の、傲慢さをもちあわせていたのですけどね。
お互いに。
それが、ある一つのことを貫いた事で、先生もこの異国の地で、しっかりとやって行こうという感情も出てきたのでしょうね。
そして、とても素直な彼女の芯が、出来てきたのでしょうね。
もう、とっても眼がまぶしいくらい先生は輝いていました。
とってもうれしかったですし、何か勇気というか、エネルギーを貰いましたね。
そうして昨日は昨日で、乳癌の友人からの話し。
この週末ご実家に帰られたそうで。
でも、親御さんには、ご自信の病気の事は言えなかったようですが、ある方にこう言われたと。
それは、
『どうしてもその治療で行くの?あなたの中に迷いがある様ね。どの治療で行くかはあなたが決める事で構わないけど、迷いが一番悪いよ。』
と。
その時彼女も考えたそうです。
『私も自分でパニックに陥っていたのかも知れないわ。で、有る人にどんなにいい事といわれてれても、脳から指令で、細胞は癒されていくのだから、本当に自分がその状況で、平安かどうか、もう一度、よく自分を見つめてみては。』
と。
で、考えたそうです。
『何が平安か、平安じゃないか。』
そうだよね。
どうしても、自分の気持ちが置き去りになりやすいよね。落ち着いて状況を判断していかないとね。
そして、彼女は、『田中先生も言っていたもんね。
何事も貫きとうす。事が大切だって。
これだと感じたらね。』
って。
ふむふむ。
じゃあ、何がこれだって感じるかって、考えたら、
やっぱり、自分の感性なのかも知れないね。
彼女も色々な人と交わりながら、自分の迷いに気が付いたらしく、自分の今の状況を見ようとし始めたのね。
それから、彼女が私に『何かお勧めの本とかあるかな。』と聞かれたので、すかさず、
『自分で本屋さんに行って、感性を研ぎ澄ませて見て。きっと今あなたに必要な本を手に取るはずだから。』と。
そして、『出来たらまずは敵をやっつけるには敵を知らなくっちゃならないから、専門書コーナーも分かりやすいの有るから、見てみたら。』
と、話しました。
彼女もまた、眼を輝かせ、『そうだね。行ってみるよ。これからが私の第一歩だね。しっかり集中してみるね。』
そっかああ。
私が思い切って言ってから、1週間。
それぞれの思いですごした1週間。
更には、彼女から、『この迷いも必要だったから、あちこち行ったんだね。』との一言。
なるほどだね。
ホント、この世に何一つ無駄な事はないってよく言うけど、それだけ、時間とお金と体力を費やしたからこそ、得られる物って有るよね。
きっと彼女なら、彼女にあった方法を見つけていくでしょう。
もちろん、これからだって真っ直ぐに行かない事も、
壁にぶつかる事も、不安に陥る事も有るかもしれないけど、わたしは応援します。
影ながら。
そして、私の必要になった時は、一緒にいつでも
考えれる体制をとっておきたいなって考えましたね。
『貫く。』って一言で言えば簡単だけど、
真剣にその事に向かうって、体力も、気力も、
時間も何もかもかけてだからね。
エネルギーは必要よね。
彼女もきっと貫いてくれるでしょう。
ううううう。
とすると、先生や彼女ばかりが輝いて、私が
輝けないとつまらないわね。
さてはて。
私の貫きは。
ああああ、
まずは、山のようになっている資料整理だわね。
だけどこれって、いつまで貫きとうせば、
底に着くのかしら。
それとも、反対に天井まで、積み上げれば
それはそれで、いいのかも。
って、その前に、腹ごしらえだわね。
ぐううう。
お弁当食べないと、おなかと背中がくっついちゃう
うふふふ。
それまで貫くにも、相当時間はかかりますが・・・。

のほほほほ。牢